ぼくの本棚195:求めない by 加島祥造
お金が欲しい人、ものが欲しい人、能力が欲しい人、健康が欲しい人、自由が欲しい人にとって「求めない」という言葉は、全ての思考を凍らしてしまう強力なパワーがある。かくいう僕も自己実現のために、欲望願望過多の日々を送っている。そもそもなぜ人は「求めて」しまうのか。欲望を持つことはいけないことなのか。加島氏は言う。「五分間、いや三分間でいい。何も求めないでいてごらん。全身を頭の支配から開放してごらん。すると君は命のままに生きていると知る。求めないで放っておいても、体はゆったり生きていると知る。」どうしようか迷った時、求めないと気持ちが楽になるのだという。確かに自分の力が及ばない、何かの事情で全てを受け容れなければならない時、誰にも頼れないし、期待もできないし、何も求めていないから、ようやく雑念を払い率直に事実に向き合える。なんでも外に求めていた空しさに気づき、自分の内なる陰陽のバランスに気づき、内なる声に耳を傾けることができる。それは偶然、全てを「捨てたり」「無くしたり」する機会を得ることで、本来の自分を取り戻せた時のほっとする、あの感覚に似ているのかもしれない。
編集長 尾中謙文
Text by onaka
