ぼくの本棚 170:知の編集工学 by 松岡正剛
マルチメディアの大変革はすでに中世の時代から起きていた。一つは「系譜」の発見による家系の概念だ。血脈のネットワークによる情報経路の概念はあっという間に世界中に広がった。血脈の系統樹による情報整理と情報操作は、さながら中世版マイクロソフトやアップルの抗争のようだったと松岡氏は言う。二つ目は「劇場」を使った祭政一致である。シェイクスピアなどのドラマを劇場で行うことで、情報知識の再生は情報の編集技術を飛躍的に発展させた。日本では「能舞台」がこの世とあの世を繋ぐ「場」として情報知識再生の役割をはたし、世阿弥の「風姿花伝」は奥義のデータベースだったわけだ。松岡氏はマルチメディアの知を再編集するためには、情報化と編集化を切り離さないこと、ハードとソフトを切り離さないこと、経済と文化を切り離さないことが最も重要だと言っているが、ITに関わる全ての人はこの意味をよく考え、自らを問い直した方がいい。
編集長 尾中謙文
Text by onaka
