ぼくの本棚 160:キャズム by ジェフリー・ムーア
新たなハイテクノロジーが市場に浸透する時、まずテッキー(テクノロジーおたく)がいて、イノベーターが市場を創り、アーリーアダプターが市場を拡大しアーリーマジョリティー、レイトマジョリティーと顧客が増えながら市場が拡大していく。このプロセスはテクノロジーが購買者に受け入れられていく段階をマーケティングモデル化したものだ。ところがこの連鎖効果は、次の顧客グループに購買意欲を高める努力を怠ると、あっという間に市場と市場の間に奈落の溝が空く。ムーアはこの連鎖の溝をキャズムと呼んだ。消えていった多くのハイテク商品は連鎖の波に乗り切れなかったものばかりだ。しかし短期間に波に乗って市場を押さえデファクトスタンダード化すれば、マイクロソフトのように長期に渡って覇権を穫れる。本書が書かれた1991年頃、新市場を創るのはクチコミだといわれたが、16年を経過した今、クチコミはSNSやネットコミュニティーに替わっただけでその本質は変わっていない。ハイテク市場のベルカーブ(成長)は巨額の広告代理店費でなく、実は顧客同志の信頼情報の交換で成り立っていると考えるのは飛躍しすぎだろうか。
編集長 尾中謙文
Text by onaka
