ぼくの本棚 140:天才の栄光と挫折 数学者列伝 by 藤原正彦
2007.08.23 Thursday
以前「この国のけじめ」を紹介した藤原氏は、お茶の水女子大学の教授であり数学者である。本書で登場する天才数学者たちはいずれも深い孤独や失意に苛まれる。苦悩の連続の中でさまざまな難問に挑む姿は、天才が栄光を掴むサクセスストーリーというより、天才が生身の人間であるがゆえの苦しさを浮き彫りにしている。例えばニュートンは3歳の時に母親に置き去りにされているし、江戸時代に和算の大家といわれた関孝和が算聖と崇拝されたのは、実に死後30年経ってからだった。藤原氏は同業の天才を克明に観察し、どん底にいる天才がどうやって壁を乗り越えたのか、尊厳と品格をもって数学者の原点に迫っている。ちなみに映画にもなった「博士の愛した数式」を執筆するきっかけになったのは本書にあったと小川洋子氏は言っている。
編集長 尾中謙文
Text by onaka
