ぼくの本棚 127:宇宙樹cosmic tree by 竹村真一
竹村氏の言葉は限りなく美しい。それでいて核心をみごとに射ぬいているから、読後に清涼が残る。本書は人間と植物の共生について書かれた文明論だ。「宇宙器官としての樹木」という章で「私たちの身体もその70%が水であり、歩く水袋のようなものだが、樹木の場合はことさらに水が地面から大きく伸び上がり、手を一杯にひろげて自らを成就するような垂直性の歓びを表現しているように感じられる」と人間も樹木も組成しているのは水であると言っている。竹村氏は春先、太い樹木に耳をあてるとゴボゴボと音をたてて水が立ち昇ったというが、僕が子供の頃聴いた大樹の音は、まるで雨期の後の急流の川のようにゴーっという轟音で、動かない大樹が生き物として急に怖い存在に変わり、近づけなくなった記憶がある。本書は植物という形を借りた宇宙的知性と人間との関係性について新たな文明の尺度を我々に教えてくれる。
編集長 尾中謙文
Text by onaka
