BLOG | WHITEHEAD March:2008

ぼくの本棚205:あなたが世界を変える日 by セヴァン・カリス=スズキ

2008.03.28 Friday

「地球を良くしたい」という気持ちを素直に表現できるチャンスはめったに無いが、本書を紹介することで少しは役目を果たすことができるかもしれない。まず本書を素直に読んで欲しい。本書は12歳の少女セヴァンがリオの国際環境サミットでおこなった驚くべきスピーチだ。世界中の飢えに苦しむ子供達のために、セヴァンは戦争も貧しさも、地球という大家族の中でわかち合わなくてはいけないのだという。戦争のお金を環境と貧しさに全部使えば、この地球は素晴らしい星になるのだと。「わたしたち子供の未来を真剣に考えたことがありますか?」洞爺湖サミットではたしてセヴァンのような感動が得られるのか。いまの日本に環境問題に対するピュアな初心が貫けるのだろうか。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚204:戦場カメラマン by 石川文洋

2008.03.27 Thursday

チベットのラサで暴動が起き、数十人の死者が出たというニュースを聞いた時、そして1989年の天安門事件の時も、僕は本書を真っ先に思い出した。それくらい僕にとって「戦場カメラマン」の文章と写真は鮮烈だった。「兵士たちが手にしたあらゆる武器で、村を攻撃している。頭上を回っているガンシップが、私たちの頭をかすめるように機関銃を撃ち込み、ロケットを放った。B57キャンベラジェット爆撃機が爆弾を落とし、次にナパーム弾を落とすと、部落は火の海となった。そのあとをジェット機とガンシップが機銃掃射をする」戦争というのはこういうものなのだと思った。ヒューマニズムなど断片もない。いくら格好の良い人権の話を星の数ほどしても、戦争をしてはおしまいだ。殺し合いだけは絶対避けなければいけない。本書を読んだ時、僕は痛烈にそう感じた。世界中で毎日戦争が起きているが、なんとか対話の道はないものか。石川氏の写真のように、ベトナム戦争はメディアが戦争の悲惨さや恐ろしさを報じたことで、米国は猛省を余儀なくされた。しかし、今回のラサ暴動は、中国がメディアが入ることを禁じて隠ぺいすらしている。そして最も残念なことは、一番多く投資をしている米国や仏国や英国が、いち早く中国に対し人権批判を堂々とし、チベットとの対話を促したのに対し、日本はついに静観し続け、正論も言わず、人間として恥ずべき態度をとったことだ。政治がはたすべき役割と責任とはいったい何だろうか。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚203:ユダヤ人の勉強法 by 青木偉作

2008.03.25 Tuesday

イスラエルの人口は600万人。日本の20分の1だ。世界中に移住したユダヤ人を合わせても世界人口のわずか0.2%しかいない。しかしユダヤ人は世界中、政財界、芸術、学術、思想などあらゆる階層で常にトップに君臨している。政界においてはクリントン政権下でオルブライト長官、コーヘン国防長官、ルービン財務長官、カンター商務長官、ライシュ労働長官、グリッグマン農務長官など。ブッシュ政権下でもすごい数のユダヤ人で占められている。ユダヤ人嫌いのフランスでも大統領サルコジはユダヤ人だ。芸術分野ではスピルバーグ、ウッディアレン、ダスティンホフマン、マーラー、バーンスタイン、ボブディラン、バーバラストライザンド、サイモンとガーファンクル、ビリージョエル、メンデルスゾーン、シャガール、モディリアーニなどもうきりが無い。メディア界もすごい。NBCのサーノフを始め、ABC、CBS、ロイター、バイアコムは全てユダヤ人だ。NYタイムズのザルツバーガー、ワシントンポストとニューズウイークのキャサリングラハム。タイムのスティーブンロス。新聞王ピューリッツアーもそうだ。ビジネス界もすごい。ロスチャイルド、シェル石油のマーカスサミュエル、自動車のシトロエン、ダイアモンドのデ・ビアスのオッペンハイマー、オリベッティ、リーバイストラウスなど。コンピューターを発明したフォンノイマン。経済学者マルクス。哲学者スピノザ。文豪ではカフカ、サリンジャー。精神学者フロイト。ノーベル賞受賞者ではアインシュタイン、キッシンジャーなど。キューバ革命家チェ・ゲバラもそうだ。ユダヤ人はなぜ優秀なのか?幼児期の教育にあると本書には書いてある。幼児期の子供を持つ親御さんはきっと気になるにちがいない。いや、そうでなくても、知の世界を制するユダヤ人の勉強法は一読に値することはまちがいない。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚202:インテリジェンス人間論 by 佐藤優

2008.03.24 Monday

本書を読むと、佐藤氏の洞察力はただものではないことがよくわかる。スパイに必要な素質や資質は、「007」ばりのガンテクニックでも、「ミッションインポシブル」のような人間離れしたアクションでもない。冷静な観察力と正確な記憶力と文化的素養のある語学力なのだ。そして幅広い相手への的確で素早い対応や、過度の緊張にも動じない受容と忍耐の場数を踏むことが、分析力の緻密さに磨きをかける。本書に登場する実名は鈴木宗男、橋本龍太郎、小渕恵三、森喜朗、プーチン、金日成など国を動かしてきた大物ばかりだ。スパイの活動実体も克明に描かれている。しかし見落とせないのは民族的、多元的価値観を持たないと、国際政治の諜報判断など何一つできないという事実だ。TVがお笑い漬けにした「そんなの関係ない」と言っている日本人にとって、もはやポジティブインテリジェンスは不用なのか。政治決断さえまともにできない有名無実になった政治家に、国際情勢の諜報活動など遠い世界の話なのか。こうしている間にもスパイ天国日本において、世界中の情報と諜報が、日本政治抜きで飛び交っているのは悔しいがまぎれも無い現実だ。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚201:その数字が戦略を決める by イアン・エアーズ

2008.03.14 Friday

今日の株価は?昨日のドラマの視聴率は?降水確立は?統計学や多変量解析は、今や当り前のように日々の生活に溶け込んでいる。本書では、一見異なる二つの集合の相関関係を、テラバイト(兆単位)という膨大な単位でマイニング(計算し解析)することを「絶対計算」と呼んでいる。例えば購買履歴と離婚率の予測。降雨量とワインビンテージの値段の予測。遺伝子と寿命の予測。人が来年の夏に何をするかという予測。ネットが生活の中に入り、検索可能な公開情報はほとんど手に入るようになった。あとはテラマイニングだけで未来が予測できてしまう。グーグルの持つ膨大な情報量を世界中の政治家が怖れる理由はここにある。コンピュータ予測万能の時代に、人の不安定な直感など活かされるのだろうか。予測可能な未来をあなたはどこまでコンピューターに委ねるだろうか。このあまりにも便利な確率に頼る生活は永遠に続くのだろうか。「絶対計算」で戦争はすでに予測可能なのだろうか。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚200:空海の夢 by 松岡正剛

2008.03.13 Thursday

空海は約1200年前31才の時、最澄とともに遣唐使として唐に渡り、死後90年たって弘法大師の称号を醍醐天皇から与えられた、仏教史上、最も有名なお坊さんだ。留学僧として20年修行するところをたった2年で様々な奥義を会得し、さっさと日本に帰って来てしまった。エリート官僚・国費留学の最澄と違い、貧乏・私費留学の空海にとって、一分一秒がいかに集約された時間だったかは容易に想像がつく。43才の時に朝廷から高野山を賜り、金剛峯寺で即身仏になるまで厳しい修行を続けた。大乗仏教として当時最も流行った密教(師が弟子に伝える)真言宗を開いたが、最澄は天台宗を開いたのだから当時はさぞ密教が大ブームだったに違いない。では空海がなぜ魅力的だったのか。松岡氏は「仏教の要諦とは、せんじつめれば、いかに意識をコントロールできるかという点にかかっている」といっている。人にとって謙虚に自戒し、それを持続させ、智慧を受け容れることがいかに難しいかは、千年の時を経ても全く変わっていない。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚199:地頭(じあたま)力を鍛える by 細谷功

2008.03.10 Monday

「フェルミ推定」という言葉をご存じだろうか。日本にラーメン屋さんは何軒あるか。日本で一日何人の人がラーメンを食べているか。日本の一日のラーメンの売上はいくらか。このような一見掴みどころの無い物理量を短時間で概算することをフェルミ推定という。フェルミ推定を使うと物事が単純化され圧倒的に効率良く説明できる。細谷氏は本書で人間の知的能力には知識、記憶、感性の三つに地頭(じあたま)が加わると言っている。地頭とは考える力のことで仮説、フレームワーク、抽象化といった思考力と、論理、直観、好奇心といった本来、人に備わっている力からなる。ネットによって情報化時代になり、誰もが多くの知識や情報を扱えるようになった反面、考える力が衰えてしまった。あなたの地頭はいかがだろうか。ちなみに「最近の若者は」という言い方は「他者の過度の一般化」つまりただの偏見であって、フェルミ推定とは全く違う。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚198:テクノロジストの条件 by P・F・ドラッカー

2008.03.07 Friday

多くの経営者は、自分が持っている不完全なアイデアと、これまで得た知識や智慧や経験知を、どうしたら会社に活かせるのか悩んでいる。ものづくりが得意なはずの日本で、近年テクノロジーのイノベーションが無い。ドラッカーはイノベーションには「目的意識をともなう知識、創意、集中力」が必要だと言っている。では日本に欠けているものは何か。勤勉、忍耐を常とし、品質と生産性において世界をリードしてきた日本が、いまやイノベーションレースから激しく脱落しようとしている。顧客至上主義を貫けば、その先にまだ成長や発展があるのか。ドラッカーは知識労働の生産性を向上するためには自ら継続して学び、人に教えることが大切なのだという。やはり問題は人なのか。そういえば最近の労働者はどことなく学ぶ意欲や遊ぶ元気がない。精神的、人間的な成長を支えるメンターも少ない。逆に定年を迎えた人は向学心旺盛だ。ものづくりが文明をつくるとドラッカーは言うが日本の未来は、はたしてどうだろうか。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚197:2ちゃんねるはなぜ潰れないのか? by ひろゆき(西村博之)

2008.03.04 Tuesday

「2ちゃんねる」という言葉を聞いただけで、寒い気持ちになる広報担当者はかなりいるに違いない。それぐらい「2ちゃんねる」というWebの掲示板は社会的影響力を持っている。「2ちゃんねる」はひろゆきが個人で始めたWeb掲示板だ。誰から命令されるわけでもなく、どこの影響も受けていない。ただユーザーが集まる。そして書き込む。この単純な繰り返しが閲覧者、参加者の興奮子を縦横に揺さぶり、時には炎上し、社会を巻き込む。予定調和などもともと考えて無いからコントロールはできない。ゆえに嘘、デマ、憶測の情報はそれなりに当然書き込まれる。この広報能力の範囲を越えた無秩序は、日本のように一見上品な計画経済が進んだ国においてはとても厄介だ。ひろゆきのすごいところは、お金を使わないで「人を惹きつけ、人を集める」ことがむちゃくちゃにうまいことだ。さらに法的にも逆手に取っているから電博などメガエージェンシーも足元にも及ばない。それは人が何に驚き、何に興味を持ち、何を欲し、どう行動するかという人間の本質をよく理解しているからだ。本書にはその奇才ぶりがふんだんに表れている。はたして2ちゃんねるは有害サイトなのか。善悪の判断はさておきPR・マーケティングに関わる人は是非ご一読を。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚196:「へんな会社」のつくり方 by 近藤淳也

2008.03.03 Monday

一時の起業ブームが去って骨のあるベンチャーが増えてきた。特にマッド・サイエンティスト系から支持のあつい近藤氏の「はてな」がその一つだ。常識を捨てた楽しそうな経営手法もさることながら、すでに「非連続的なアイディアをどうかたちにするか」という多くの企業がかかえる悩みを軽々とのり越えている。起業家の適性をカードゲームに例えて「大富豪と大貧民を両方楽しめる人」と近藤氏は言うが、彼の問題把握のポイントは、陰陽のエネルギーように、常に対極の構図を意図的につくることだ。ベンチャーは決して「はてな」の真似をしてはいけない。「はてな」のように情報を共有する社員が、せめて嘘をつかず、無駄を無くし、オープンで楽しい仕事環境があれば、いいものが必ず生まれるわけではない。近藤氏にとってこれはただの業務改善の過程に過ぎない。社員のアタマの中を楽にするために、あえて非常識な環境をつくることは、インターネット業界の中でいかに自分に有利なルールをつくり、勝負に集中できる最高の状態を最速でつくりだせるか、というためのほんのひとつの条件にすぎない。では「はてな」がなぜ勝負に強いのか。体裁に捕われない優れたリーダーと少数精鋭な組織が動乱の時代に最も強いことは、言うまでもなく多くの歴史が証明している。

編集長 尾中謙文

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