BLOG | WHITEHEAD January:2008

ぼくの本棚186:イノベーションの本質 by 野中郁次郎

2008.01.29 Tuesday

野中先生がオフィスにお見えになった。社長TVのアドバイザリーコミッティーを引き受けていただくことになった。野中先生は知識こそが重要な経営資源である「知識創造」を提唱した世界的な経営学者だ。暗黙知と形式知がダイナミックに連動するSECIモデルをつくり、これを学んだ多くの世界中の経営者は「知識経営」を実践した。暗黙値とは何か。野中先生によれば、経験や勘に基づく言葉にできない潜在的知識のことをいう。本来の言葉の意味(人間の身体に備わっている動作以前に働く制御機能)と違うと指摘する人もいるが、世界的に暗黙知という言葉や意味を有名にした功績は讃えられるべきだ。また形式知と対比させることで、目に見えるものより、目に見えないことに重要な意味が含まれている、という啓示と感動を多くの経営者に与えた。野中先生は哲学者でもあるのだ。本書はイノベーションの成功事例集であり、暗黙知のサンプルが数多く紹介されている。企業の美意識や本質を考える貴兄にはバイブルのように役立つはずだ。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚185:インテリジェンス 武器なき戦争 by 佐藤優・手嶋龍一

2008.01.24 Thursday

国家の舵取りは情報の精度と分析力にかかっているといってもいい。ところが日本ではスパイ天国と言われるように、官僚や自衛官は国家機密情報を平然と売っている。政治家にいたっては条約官僚の作文を国会で読み上げ、世界情勢との乖離は以前よりひどくなっている。国連決議など、時には国際社会では役に立たない。現実は常に変化しているからだ。事実が明るみに出ると、条約など簡単に反故になってしまう。だからこそ諜報、防諜といったインテリジェンスが重要になる。国家戦略は情報収集能力と情報分析力の統合力と言い換えても過言ではない。1983年のソ連軍による大韓航空機撃墜事件の時、日本政府は国民に情報操作をして、実は情報が筒抜けだったという事実をねじ曲げた。佐藤氏は「宣伝と謀略は潜在的もしくは顕在的な脅威に対して行うもので、自国民を対象に行ってはいけない」と言う。自国がやるロビー活動と敵の情報操作とは同じ謀略でも違うからだ。日本はスパイやテロリストを水際で止める、カウンターインテリジェンスの能力がいくら高くても、ポジティブインテリジェンスをどうにかしない限り、いつまでたっても外交大国にはなれない。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚184:中年英語組/プリンストン大学のにわか教授 by 岸本周平

2008.01.23 Wednesday

アメリカでは意思表示をしないと生きていけない。とりわけKY(空気を読む)に長けた日本人ほどこの洗礼を受けやすい。黙っているとアホだと思われる。口べたな人でも言う時は驚くほどはっきりモノを言う。多民族国家では奥ゆかしさなど存在しない。相手が目上であろうが容赦しない。だからG7で日本が弱いのも頷ける。ネクタイをとりファーストネームで呼び合い、本音で世界経済を語ろうとする雰囲気の中で、日本人は特にディベートに弱い。本書はまったく英語がしゃべれない岸本氏が、大蔵省の交流人事で研究員として赴任するところから始まる。岸本氏が失敗を繰り返しながら、だんだん英語に慣れていく様子が生々しくライブ感がある。「一瞬、頭が真っ白になった。慣れないことはしないに限る。日本の常識は世界の非常識ということがあるとは分かっているような気がしていた」中年で留学しなければならない人は、本書を読むと元気がでる。ちなみに岸本氏は東大卒大蔵省の超エリート。こんな人でもしゃべれない日本の英語教育への不満は、いったいどこにぶつけたらよいのだろうか。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚183:非線形科学 by 蔵本由紀

2008.01.21 Monday

インターネットが急激に拡大した裏側に、リスペクト(尊敬)したものをシェア(共有)する、人間の本質的な行動要素が含まれていることは周知の事実だ。複雑で多様な社会になればなるほど、ネットの世界では、少数のステップで見ず知らずの人と繋がるスモールワールドネットワークが生まれる。例えば知人関係が100人あるとすると、2段階で繋がる人は100の二乗で1万人、3段階で100万人、4段階で1億人、5段階で人口のすべてをカバーしてしまう。現実世界では不可能だった世界中と「繋がる」ことをネットは簡単に可能にしてしまう。さらにリンクを繋ぎ変えるだけで新たなネットワークが生まれる。しかしネットワークの成長は新たな情報格差を生んでしまう。多くの発着便を持つハブ空港などはこうしたネットワーク理論を応用しているが、現実というカオスで起きる課題には対応しきれていない。こうした一見手の着けようが無い、複雑な自然現象にも能動因を解明する方法がある。非線形科学とは何か?本書では具体例をあげながら説明しているが、全てを理解するには骨が折れるに違いない。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚182:世界でもっとも美しい10の科学実験 by ロバート・P・クリース

2008.01.16 Wednesday

1851年、教養あるヨーロッパ人は地球が動いていることを、みな知ってはいたが推論に過ぎなかった。というのも望遠鏡はまだ一般人には手が届かなかったし、天文観測になると専門的すぎて別世界の話だったからだ。フーコーが「振り子の実験」をやるまでは。フーコーが「地球が動いていることを証明するデモンストレーションを行う」という話は瞬く間にパリ中に伝染した。ナポレオンでさえフーコーにパンテオン大聖堂で一般公開するよう求めた。フーコーは巨大なドームの天井から振り子を垂らし、ワイヤーの長さは67メートルに達した。はたして、振り子は5、6時間ほどで目に見えるほど振動の向きを6、70度変えた。ナポレオンはいたく感激し、フーコーをパリ天文台の物理学者に任命した。この成功は世界中にあっという間に広がり、大聖堂のあるオックスフォード、ニューヨーク、ローマで実験が行われた。著者はこの実験には崇高美があるという。ものの見方をはっきりと提示する美や、この世界と自分とがしっくり溶け合う美だ。そういえば、日本ではこのような美に出会うことがめっきり少なくなった、と感じるのは僕だけではないはずだ。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚181:地球では1秒間にサッカー場1面分の緑が消えている by 田中章義

2008.01.15 Tuesday

地球温暖化の問題から、急に地球のことを知る機会が増えている人が多い。しかし、あなたは今、地球で起きていることの何をどれ位知っているのだろうか。いま1日100種の生物が絶滅している。いま1日550人の子供が戦争で殺されている。いまHIVの感染者は1日6000人増えている。いま1日27人の子供が地雷で手足をなくしている。いま世界で2億5000万人の子供が働かされている。データでみる地球がこんなに悲しいものなのかという思いになる。著者は「少しでも地球の未来がよくなることを願って」本書をつくった。地球の未来を創るために、我々はまず、いまの地球の真実を知ることから始めなければならない。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚180:スタバではグランデを買え! by 吉本佳生

2008.01.09 Wednesday

あなたがモノを買う時、良かったと感じる基準はなんだろうか?一般に価格は消費者の満足度とコストの間で決まる。多少高くても希少性がありデザインがいいと満足するが、似たものが安く出回り、誰もが持ち始めると満足度は低くなる。「ローマの休日」が500円で売っていたりすると、何度も観たはずなのに所有欲が起きてくる。百貨店で数千円で売られているものが百円ショップで売られていたりする場合も同様で、必要ないものまで買ってしまったりする。ユニクロでカシミヤセーターが驚く安さで売っているのもそうだ。高くなったタクシーにはなんとなく乗りたくなくなる。つまり「価格」と「感情」が社会を支配し動かしているのだ。最近はモノあまりと言われ、みんながブログに書き込むので商品選択が厳しくなっているが、逆手に取ると、買いたくなる価格と満足度を制したものが勝ち組になっている。本書は多変量解析や統計学などわからない人にも社会の仕組みが簡単にわかる。企業側、消費者側どちらから読んでも面白く読める良書だ。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚179:ハンナ・アーレント by ジュリア・クリステヴァ

2008.01.08 Tuesday

本書はクリステヴァのハンナ・アーレント伝である。ハンナは病弱な子供の頃から無力感を感じながらも、ユダヤ人として誇り高い生き方をする。ずば抜けた秀才だったハンナは飛び級で入ったマールブルク大学で助教授のハイデガーと出会う。ハンナが政治哲学、政治思想家として確立するのも、ハイデガーとの愛憎と思想が絡み合い、影響し合ったからだ。残念ながらハイデガーからは裏切られ、だまされ続ける。ハイデガーはヒトラーを称えナチズムに傾倒したのだ。しかしこれがもとで「全体主義の起源」「人間の条件」が生まれる。ハンナは亡命先の米国から帰国し、17年ぶりに再会するが「嫌いな人の真実よりも、好きな人の嘘がいい」と言って非難の渦中にあったハイデガーをかばう。愛とは物事の本質とは無関係なのだ。著者クリステヴァはパリ大学の教授として女性のアイデンティティーやフェミニズムを研究し続けてきた。しかしハンナをみる限り、愛情の上に立ったフェミニズム(男女同権主義)は空しさを感じえない。難解な思想評伝だが一読する価値はある。

編集長 尾中謙文

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ぼくの本棚178:地球のなおし方 by デニス・メドウズ/枝廣淳子

2008.01.07 Monday

メドウズは30年以上前、ローマクラブで現在の地球環境危機を予測した「成長の限界」によって世界中に衝撃を与えた。今にして思えばあまりに正確なシステムダイナミクスとシミュレーションによって地球環境が汚染されていく未来の状況を詳細に描き出していた。そのメドウズが「限界を超えてしまった環境を引き戻す知恵」があるのだという。今、世界中で旬のテーマ「水」は地球にどれ位あるのかという問いに、海水97.5%、淡水2.5%、その内人間が使える水はたった0.01%とデータで検証しながら、例えるとバケツ一杯が地球の水で、コップ一杯が淡水で、そのうち飲み水はスプーン一杯分と子供でもわかるような表現を本書では使っている。その上で持続できる水の使い方は何か。水を循環利用すること/水
を回収し、浄化し、再利用する。都市部で雨水を集めること/大規模ダムと同じ位低コストで使える。作物の根に点滴灌漑を行うこと/水の量を30-70%減らし逆に収穫量を20-90%上げられる。など使う用途で具体策を説いている。今こそこうした根本的な原因を考え、ひとりひとりが自分ができるレベルから取り組むことが「足るを知る」地球環境を取り戻すためには不可欠なのだ。

編集長 尾中謙文

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